中高年のおしっこの悩み
考えよう??!
生活習慣病とおしっこのこと
講演 <1> トイレの悩み解消
?前立腺肥大癥の最新治療?
尿のトラブルで最も多いものに頻尿があります。過活動膀胱により急に尿がしたくなる(尿意切迫感)ためで、40歳以上の男女約12%、1千萬人以上が悩んでいるといわれています。一方、男性に多い悩みが尿の出の悪さで、前立腺肥大癥に起因します。女性に特徴的なのが尿漏れで、出産で骨盤底筋が緩みがちなことなどが原因です。こうした性差などはありますが、だいたい一日の排尿回數は7回まで、3~4時間はトイレを意識せずに済むのが理想です。また夜2~3回トイレに起きる場合は特に不便を感じられるようです。
今回は前立腺肥大癥を中心に説明します。前立腺は膀胱の下にある生殖器で、これが尿道を閉塞し尿が出にくくなるわけですが、閉塞の原因は主に二つあります。前立腺そのものが肥大するケースと、前立腺內の平滑筋が過剰に収縮し尿道が圧迫されるケースです。通常クリぐらいの大きさの前立腺が、テニスボールぐらいまで大きくなる方もいます。
病院では腹部の超音波(エコー)検査で前立腺の大きさや殘尿の有無を確認します。尿流測定で、尿の勢いをチェックすることもあります。正常の場合は尿の量にかかわらず、30秒以內には排尿し終わります。もし1分前後かかるようならぜひ受診してください。
治療法では、まず平滑筋の収縮を抑えるα1遮斷薬が挙げられます。飲むと數日で癥狀の改善が期待できます。また前立腺腫の肥大を小さくする薬として、男性ホルモンの作用を抑制する5α還元酵素阻害剤があります。
さらにPDE5という酵素の働きを阻害する治療薬も出てきました。血流を良くし、平滑筋を弛緩させる効果があります。実はもともとED(勃起障害)治療薬として使われていたのですが、排尿障害にも効果があり、公的醫療保険の適用が可能になりました。α1遮斷薬は効果がある一方で、中には射精障害が起こる方もいて、このPDE5阻害薬が新たな選択肢になってきています。前立腺の肥大が大きい場合は、5α還元酵素阻害剤との併用療法が行われることもあります。
薬であまり改善しない場合など、手術で肥大部分を取り除きます。尿道から內視鏡を挿入してレーザーや電気メスで切除するので、以前のような開腹手術はほぼ必要ありません。特に肥大した內腺をレーザーでくり抜くような術式は、出血が少なくて済みます。脳梗塞などの治療で抗凝固剤を服用している場合は、レーザーで肥大を蒸発させる術式もあります。 前立腺肥大癥の約半數の方が過活動膀胱を合併しています??攻偿辚笏aの併用で治療しますが、口內が乾燥しやすく、β3刺激薬が適している場合もあります。 最近は特に前立腺がんが増えています。血液中の「PSA」で前立腺がんを識別する検査は、50歳を超えたら1年に1回はしてほしい。 また夜間頻尿の人は4500萬人以上ともいわれます。恥ずかしがらず、普段から気軽に泌尿器科を受診しましょう。
- Q夜間頻尿で悩んでいます。
- A夜間にトイレに行く回數は50代で1回、70代で2回、80代は3回は當たり前などといわれています。夜間頻尿は治しづらくもあるのですが、一つのポイントは夜だけ頻尿か、晝夜ともに頻尿かという點です。夜だけという場合は頻尿というより、夜間多尿とされます。夜2回以上トイレに行く人の75%は夜間多尿です。これは晝間に足がむくみやすい人がなりやすく、実際に下半身にたまった水を夜間に出そうとすることが原因です。夜間に排尿日誌をつけることをお勧めします。尿にはたくさんの情報が入っています。日々観察するよう習慣づけてみてください。
- Qα1遮斷薬を処方されていますが、夜中のトイレの回數が改善しません。
- A先ほども指摘したように、夜だけ頻尿か晝夜ともに頻尿かに加え、尿の出の悪さの有無もポイントになります。α1遮斷薬にも數種類ありますし、PDE5阻害薬も新たな選択肢になるでしょう。尿の出の悪さを伴わない場合、前立腺肥大癥より過活動膀胱が主體ということも考えられます。その場合は抗コリン薬や、β刺激薬を併用することで効果が上がることがありますので、主治醫に相談してみてください。
監修

日本大學醫學部泌尿器科學系
髙橋 悟 主任教授(たかはし?さとる)
東京大學醫學部泌尿器科助教授などを経て、05年から現職。14年から日本大學醫學部付屬板橋病院副病院長。著書に「よくわかる前立腺の病気」(巖波アクティブ新書)など。